黄文亮「孔明の霊感銭占い」(昭和38年)
占術関連の話題が続くが、黄文亮「孔明の霊感銭占い」(昭和38年、黄文亮)は筆者が90年前後に京都のとある古書店の均一台で購入したもの。陰陽の爻卦5爻をコインで占う占。中国、台湾などではポピュラーな孔明神卦と呼ばれるものを一般向けに平易に解説した書。体裁は文庫本だが、出版社欄も著者名となっているので自費出版のようなものだろうか。
周易では卦を求めてその意味だけを見る、いわゆるお神籤のような固定的な見方は初学のものであって、状況に応じて互卦約象、変卦、之卦などの通変を見るのが通常だが、この占いは卦を出したらその結果が全ての、まさしくおみくじのように使うようだ。至極単純な占だがしかし却ってこの方が便利なこともある。
周易とは異なり爻は5つしかない。しかし4爻の太玄経のように爻が天地人の3種(三才)ある訳ではなく陰陽の2種なのは周易と同じである。というよりもともとこの占は銭を投げてその表裏を見るので陰陽の別しかないのは当たり前ではある。周易や断易における、いわゆる擲銭法で立卦するのが作法なのだ。しかし動爻は見ない。得られた卦の意味を見るだけだ。
硬貨5枚の陰陽の配列は2の5乗で32通りとなる。周易では爻が一つ多い6乗で64卦となるのでいわゆるこの占の大成卦は半分になる計算だ。勿論それぞれの卦に星震卦、曲直卦などの名称がついている。
結局、硬貨を投げなくとも32種の中から一卦を選びさえすれば足りることになるので、例えば短冊に卦を書き一枚を引いても結果に何ら変わりはない。カードによるワンオラクルのようなものだ。だがしかし、ことによると奥伝がもしあるのなら通変を見るのかも知れない。
こう見て行くとなかなか興味深い。台湾の専門書等に当たってみたくなる。