新井白蛾についてはWikipediaに詳しいが、易学者として著名な真勢中洲、谷川龍山の師に当たる江戸中期の儒学者、朱子学者であり古易復興を唱え占筮をよくした。
Wikipedia 新井白蛾
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E4%BA%95%E7%99%BD%E8%9B%BE
その前にまず秘伝とは何だろうか。
勿論、字義通りの謂ではあるが、基本的に物事には必ず表裏というものがあって、裏は表に隠されており、その裏を知ることによって物事の奥義に達することが出来るという世界観と言って良いかと思う。仏教には顕密二教があり顕教は密教と対をなし、伝教大師は顕密不二と言った。表を修して然る後に裏、つまり密教に入ることで仏道の奥義に初めて入ることが出来るという世界観である。顕教の宗派でも奥義は存在し、また西洋にあってもエソテリックな教義においては同様で、誰もが窺い知ることの出来ない秘儀が存在する、もしくはその存在が想定される、ということだろう。これは易やその他の占筮でも同じと思われる。
その秘伝を、裏、などと言い江戸時代においては金銭で取引された。
これは現代でも同様で、私も何十万円で秘伝を買ったという人を現実に知っている。
しかし、この秘伝というものはそれを知ったからと言って直ちに使えるとは限らないところが秘伝の秘伝たるところで、全て似たようなものだとは思うが、術と言われるものは人につく、のであって、秘伝を会得した本人以外に使えないということが往々にしてあり、大金をもって買ってもそれが無駄になるリスクもある。かくして気がついてみれば大散財していたなどという話はいくらでもある。
話が横に逸れてしまったが、下記は大島中堂の白蛾伝その他から拾った所謂、秘伝と呼ばれるものの抜粋である。白蛾なので三変筮が基本になっている。
乾坤同化六物新
これは白蛾の秘伝で最も知られたもので、得卦の初爻を変じて過去を見、上爻を変じて未来を見、初上を同時に変じて物事の決着を見るというもので、天眼通とも呼ばれる。
例えば得卦が姤であれば、初爻を変じた乾が過去を表し、上爻を変じた大過が未来を示し、初上変じた夬がその帰着、というわけである。
吉方位
吉方位を見るには、内外で変じた卦の示す方角の裏の方位とする。
例えば、既済の九五であれば、動いた外卦の坎の方位、北の裏である南方が吉方位である。
失せ物占
内卦の裏卦を失せ物がある方位とする。
養子になる人
无妄、女后、復、升
兄弟の数
本卦の互卦の上卦の卦数を用いる。互卦の上卦はつまり約象のこと(三、四、五爻)。
乾は四か九、もしくは十三
坤は五か十、もしくは十五
震は三か八、もしくは十一
巽は震に同じ。
坎は一か六、もしくは七
艮は坤に同じ。
離は二か七、もしくは九
兌は乾に同じ。
(管理人註:現代ではなかなか適用されないでしょう)
女難の卦
男子の運勢占において、次の卦を得た時には女難ありとみる。
泰九二
謙初六
随九五
復六三
帰妹六五
豊九四
沢九五
女子不貞の卦
山水蒙六三
坎為水
澤山咸九三
雷風恒九三
雷水解六三
風水渙六四
雷山小過
家督を継がぬ変爻
本卦内卦に乾、坤、震、巽を得て、それが坎、離、艮、兌に変ずる場合、長男長女であっても家を出て家督を継がぬとみる。
(以下続く)