鈴木啓介「はじめてのチャネリング-誰もが持つ「覚醒スイッチ」を押す方法-」
やはりこの人もヘミシンクをきっかけとしていわば感覚が開き、今ではモノリスワークと称するセミナーを主催するようになるという人生の劇的変化を体験した方です。まるの日圭さんも普通のサラリーマンでしたし、とみなが夢駆さんも然り。チャネリングという言葉は一昔前なら霊能であり、チャネラーは霊能者、もっと前なら交霊する霊媒=Mediumということになるのだろうと思いますが、それは単に言葉遣いの変遷というより、こう言った特殊能力が以前の職業霊能者から極く普通の一般人への移行という内実を伴ったものであることに気付かされるのです。
伝統的な意味での霊媒とは昔は血筋、家系でありあるいは青森のイタコや祈祷師といったいわば社会から逸脱した存在であった筈が、ごく普通の人がある日その能力を開花させるというあり方へと変わって来ていることは興味深いところです。
著者の主催するモノリスワークについてその詳細を知りませんが、この本を読む限りは一種の自己解放の手法のようで、トラウマ(ここではブロックと言っているようです)に直面させそれを自覚、肯定し、克服するというカウンセリングの基本的メソッドであるかのように感じられました。
チャネリングの過程で陥りやすい低次の声への注意喚起も類書には見られない本書の特長と思います。潜在意識から来る個人の単なるエゴを勘違いして振り回されたり、有頂天になってしまったりすることへの戒めというのは、こういうスピリチュアル系の本ではなかなか言及しないのが一般的だからです。飽くまで主体は自分にあり、冷静に取捨選択してゆくというスタンスの重要さを改めて認識しました。一歩引いた立場からは何かおかしいということを容易に判別出来るのに、どっぷり浸かっていると不思議と分からなくなるものです。
著者の体験やワーク受講者の実例を引きながらの平易な解説は非常に参考になりました。ビジネス社刊、2010年。