宮本青枝「帰魂の卦」(昭和60年)
しばらく占の話題が続いているが、今回は宮本青枝「帰魂の卦」(主婦と生活社、昭和60年)を書棚から取り出してみた。宮本は当時、既に40年ほども共同通信社の占い欄を執筆しており、また本書の占例にも出てくるように加山雄三の奥さんからのプライベートな依頼もあった如くに当時はある程度は名の通った占い師と覚しい。
題名の帰魂の卦は周易における帰魂、遊魂の卦を想像するが全く異なる。そもそも周易ではなくこの占はサイコロ2個を使ったダイス占なのだ。6×6=36通りの組合せそれぞれに卦名がついており、この帰魂の卦というのは6のゾロ目を言う。
もともとこの占は宮本氏の師匠にあたる川原甠人という占師の「点法」というダイス占を受け継いだもののようだ。サイコロにはそれぞれ陰陽があり、陽はトランプのスートが、陰には花鳥魚月雪などが本来刻まれており、その組み合わせで卦を出す。普通のダイスを使うのはそんな特殊なダイスを持たない一般向けだ。おそらく、川原甠人のオリジナルの占なのだろうと思う。
しかし本書では得られた卦の通変はない。ただ、占例をみると占的を変えてさまざまな角度から観て行く流儀のようだ。
周易における帰魂の卦とは五爻を変じて八純卦になるものをいい、病占においてこの卦を得たら重篤と見ることもある。ちなみに遊魂は帰魂の卦の内卦を裏卦にした卦を言う。このダイス占は周易をベースにした占と本書に記載があるが、その詳細については触れられていない。
宮本氏とともにこの川原甠人という人の情報を調べてみたが、例のごとくネット以前の時代の方であり殆ど情報は見つからなかった。著書も無いようだ。またこの占のその後についても宮本一代限りのものかどうか不明である。